thumbnail131106c 「打倒Amazon」に向けて物流システムを強化するウォルマート


物流機能を強化するウォルマートの記事で、ある新聞は見出しを「ウォルマートがウェブ注文用の倉庫を新たに建設」としていたのに対し、ある新聞は「対Amazonに向けて店舗を物流拠点化する小売」としていました。より正確に小売り全体の将来像を伝えているのは後者と言えます。

Amazonを追いかけるウォルマート

十年以上前にEコマースに参入したウォルマートですが、総売上高4690億ドルの内Eコマースの売上の割合はまだまだ微々たるものです。昨年のEコマースの売上は77億ドルで、610億ドルを超えるAmazonと比較するとその差は歴然としています。ウォルマートの現在5%という決して高くない売上成長率、またオンライン・ショッピングの拡大を考えるとウォルマートがEコマース事業に注力するのは必然と言えます。

目指すは店舗のミニ配送拠点化によるオムニチャネル戦略

ここで重要なのはウォルマートにAmazonのビジネスモデルを踏襲する意思はないということです。ウォルマートは全米に約4100店舗存在し、各店舗から5マイル以内に住んでいる人の数はトータルで全人口の3分の2を超えます。これに配送センターや新施設を合わせて次世代型のフルフィルメント・ネットワークを構築しようとしているのです。

全人口の3分の2をカバーするウォルマートの店舗

(引用元:PLANET OF THE CHIMPS #2『Map shows how Walmart conquered the U.S. over the course of 50 years』

これはオンラインでの購入を促し、店舗での引き取り、店舗からの発送とあらゆるフルフィルメントを可能にする「オムニチャネル戦略」そのものと言えます。
USA Todayの記事には「世界最大級の小売企業がAmazonに対抗するため続々と店舗をミニ配送拠点化している」と書かれています。

小売業者は、購入者の家から何百キロも離れた配送センターから発送するよりも、近くの店舗から発送する方が得策であると気づき、Amazonに取られた顧客を呼び戻すことを狙いとしてそれを実現に移し始めているのです。

必要とされる新たなプラットホーム

このように店舗を配送拠点化する上で一番の問題になるのが在庫管理です。複数のチャネルからの注文を管理し、在庫のある店舗、配送センターから発送を行うという複雑な処理を行うシステムが必要になります。これに不備があると、たとえばオンライン注文で、ある店舗に在庫があるので店員がピッキングしようと思って売り場に行くと既に品切れになっている、ということもあり得ます。つまりこれまで以上にリアルタイムな在庫管理が必要となります。

DOM(Distributed Order Management:分散オーダー管理システム)

店舗在庫を効果的にマネジメントするためにDOMという新たなプラットホームが必要となります。ウォルマートはこのプラットホームの構築に巨額の投資をしており、戦略の重要な鍵となることが伺えます。
DOMは、複数チャネルを所有する小売事業や通販事業者の注文入力から資金調達、引当、出荷、決済までのマルチチャネル・オーダー・マネジメントを管理し、監視し、最適化します。注文がネットから、店舗から、コールセンターによるカタログ通販であっても、在庫、オーダー状況、物流拠点についてのグローバルなリアルタイム・ビューを提供します。これによりすべてのチャネルで同じ最新の在庫情報を見ることができるため、以下のことが実現します。

・顧客接点でネットワーク全体のリアルタイム在庫ビューを活用
・注文確定後に最適フルフィルメント拠点を決定
・フルフィルメント拠点の選定プロセスを最適化するため、在庫、輸配送コスト、人件費、・サービス・レベルのファクタリング (売掛債権買取) を同時に実施
・特別に開発された「出荷元店舗」調達アルゴリズムにより配送元として理想的な店舗を選定
・オーダー・サイクル全体で注文変更、キャンセル
・ネットで買い物、店舗で引き取り
・在庫欠品および配送関連の問題を見越して対処

WMS(Warehouse Management Systems:物流センター管理システム)

物流拠点化する店舗にはより精巧なオーダーシステムが必要となります。そこで必要となるのがWMSの店舗への導入です。
今ではほとんどの企業でコンピュータによる在庫管理を行っていますが、それらは販売管理などの「基幹システム」としての在庫管理であることが多く、一般的には品目別での管理となります。

品目別での在庫管理イメージ

しかし品目だけの情報では
「いつ、どの製造ラインで作ったものを、どこに出荷したのか?」
「○○に販売したものは、どのロットだったのか?」
「古い在庫がどれぐらいあるのか?」
といった情報は分かりません。
これらを把握するためロット・製造日を在庫管理に加えた在庫管理を行う必要があります。

ロット・製造日を在庫管理に加えたイメージ

基幹システムを切り替えるのは技術的に困難であったり、影響範囲が大きすぎて現実的ではないというケースが殆どです。
そこで、基幹システムのサブシステムとして、「モノの動きと把握」に特化したソフトウェアであるWMSが必要となるのです。
今後各店舗が小規模であっても物流拠点化していくことを考えると、こうしたソフトウェアの導入は必至といえます。

将来的には90分以内の配送が実現?

このように物流システムを上手く店舗へ移植することを前提として、ウォルマートは実際の配送にUPSやFedExなど既存の物流業者を利用せず、毎日店舗に商品を配送している運搬トラックをオンライン販売の配送に取り入れることも構想しています。これが実現すればオーダーから90分以内の配送も可能と言われています。
ウォルマートがAmazonに追いつくかどうかは未知数ですが、少なくともこれらのウォルマートの構想が実現したとき、小売りはまた新たな局面に移行すると言えます。

この記事はAmazon Vs. Walmart: E-Commerce Vs. Omni-Channel LogisticsOrange Blogが日本向けに編集したものです。
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